上野英里 誰が 捧げる 誰に
2021.12.3~12.25 ノダコンテンポラリー

この度、ノダコンテポラリーでは上野英里の個展を12月3日(金)から開催いたします。

Youtubeなどで視聴した、舞台や映画、報道番組などのワンシーンを、独自のペインティング作品として昇華させるアーティスト・上野英里。

ノダコンテンポラリーでは昨年に続き、今回が2度目の個展となります。
その間にも東京・大阪のアートフェアで作品を発表し、多くの反響を得ました。本展では映画や舞台から描くシリーズ数点を含む、新作20数点を展示いたします。ぜひご高覧くださいませ。


ARTIST STATEMENT
「教えてくれ、私たちを使用人と呼ぶ前に、誰が誰に捧げていた? そして、考える、あなたの時代で、誰があなたを永遠のものにするだろうか?」劇アマデウスでサリエリは言った。

「誰が誰に捧げる?」、あなたとわたし、どちらがどちら?

わたしは画家としてあなたに捧げているだろうか?
並ぶ絵は休日を充実させ、あなたを文化的なアート人にしている。

もしくは、あなたが観衆としてわたしに捧げているだろうか?
作品は注目を必要としている。
あなたがいなかったら「(自称でない)アーティスト」でいられない。

それでいて、永遠に祝福され、語られていくのは一体どちらだろうか?

誰も知らない。わたしは決められない。あなたもわたしも未来は見えない。

だったら、何が理由でわたしは馬鹿みたいに絵をかいているのか。
理由は沢山ある、お金、有名になりたい、評価されたい、他にも色々。

ぜんぶの理由はわたしのうぬぼれた妄想かもしれない。

(上野英里)


REVIEW
 上野英里の絵画には二重のフィルターがかかっている。ひとつは英米で上演されたミュージカルを盗撮する行為であり、もうひとつはその一瞬を切り取り描く行為である。つまり二度にわたるサンプリングにより、彼女の絵画は成り立っているのである。
 演劇は原則として一回性の藝術であり、公式の撮影を除けば、その時その場に居合わせた者にだけ受容が許される。舞台の盗撮とはこの一回性を破る行為であり、繰り返し再生することが可能で、かつ遠く離れた土地にも届けることができる。
 上野は動画配信サイトYouTubeに違法にアップロードされた盗撮映像を通して、海を隔てた向う側の舞台を鑑賞してきた。映像と音声は粗く、その内実は現地での鑑賞とは程遠い。上野は映像の中からワンショットを選択し、絵画に起こすことで、そうした映像の鑑賞体験を絵画の観者と共有する。
 描かれる人物像は水の膜を通したように茫漠としている。それは盗撮の映像ゆえの不鮮明さによるものかもしれない。古い映像でカメラの動きに合わせてライトの光が尾を引くように、画中の人物は激しいダンスの残像をともなう。
 ミュージカルとはヨーロッパからのオペレッタの輸入に始まり、移民や人種・民族的マイノリティの文化を取り入れることで発展してきたジャンルである。しかしその上演において、マイノリティの当事者たちは長い間排除されてきた。ミュージカルは他者の文化を一方的に収奪することで成長してきたのだといえよう。
 収奪というミュージカルの隠された顔を指して、上野は呼びかける、「盗め!」と。奪われたものを奪い返す闘争の場として、彼女の絵画は機能するだろう。

(安井海洋/美術批評)


 ▶WORKS , INSTALLATION VIEW

 ▶ARTIST PAGE


上野英里「誰が 捧げる 誰に -Who serves whom?-」
会期/2021年12月3日(金)~12月25日(土)
休廊/日曜・月曜
会場/NODA CONTEMPORARY
時間/11:00~18:00


「SMILEY BIRD」 2021 キャンバスに油彩 410×318mm

NODA CONTEMPORARY

TEL 052-249-3155