下家杏樹
「MUTATION」 
2021.10.15~11.5

手塚治虫や杉浦茂、藤子不二雄、吾妻ひでおなど、昭和を代表するレトロな漫画を思わせる画風が特徴です。
人物や動物などのフォルムを作り出す線の太さに強弱がついており、やわらかで有機的な表現になっています。漫画の世界では大友克洋以降、均質で無機的な線描による表現が主流になりましたが、あきらかにそれと逆境するようなレトロ感が、逆に新鮮に感じられます。また油彩画の技法にもこだわり、筆跡やマチエールにも有機的な質感が横溢しています。アート表現でいえば、筆跡を感じないフラットでシンプルで無機質な画面が流行ではありますが、下家杏樹はあくまでも人がきちんと描いたことを感じさせるペインティングネスを追求し、デジタルが覆いつくす現在の中で、いわば油彩画の王道を進もうとしています。

人物や動物を描くことが多く、時にそれらは自在に身体を伸縮させ、丸みのある優しい曲線に満ちています。植物や背景のいろいろな物質も同様の線で描かれ、画面の中のすべてに命を与えるような大らかな世界観を感じます。
また、色調も派手な原色は使わず、セピア調のノスタルジックな雰囲気を醸し出しているのも特徴です。

画面の中にはいくつかのモチーフが散りばめられていますが、それらは下家杏樹の日常生活で出会った様々な物事や感情のメタファーであり、容易にそれは鑑賞者には解読できません。画面全体が、下家杏樹の脳内にある、私的に構築されたワンダーランドであり、そこには笑いもあれば毒もあります。ユートピアでもあればディストピアでもある、清濁、聖俗、様々な二面性があり、単純に「かわいい絵」というだけでは語れない、深い作品世界が感じられます。

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私たちの世代は生まれた時からサブカルチャーが身の回りに存在していて、そして
その世代が大人になり、俗に言う「オタク」という存在は今はとても肯定的になっ
てきていると思う。
私は漫画やアニメから美術の興味をもった。
美術というと西洋の文脈を無視することはできない。しかし、日本と西洋では支持
体も描き方も真逆である。私はどちらも良さがあると思うし、欠点だってあるとお
もう。
立体感は油絵のほうが優位だが、日本画のようなスピード感はない。
インパクトは日本画の方が優位だが、油絵のように重さはない。
どっちも異なる油と水のようなものだが、上手いこと混ざってドレッシングになら
ないだろうか…。
昨今、多様性・協調性を推している世の中でそのような作品があってもいいのでな
いだろうか。
今回、動物をテーマにしているのはまさに個性の多様性というところを強調したか
ったからである。
いろんな動物を同じ空間に置くことで、私たちが生きている世の中のようなものを
表現したかったのだ。
また、最近は家にこもることで動物や植物の重要さに気がつくようになってきたこ
とから、動物を描くことが多くなったように感じる。


下家杏樹


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下家杏樹「MUTATION」
2021年10月15日(金)~11月5日(金)10:30~21:00
会場:GINZA SIX 6F 銀座蔦屋書店 インフォメーションカウンター前 

※会期・営業時間は変更になる場合がございます。
事前にホームページをご確認ください。
銀座蔦屋書店

「SMILEY BIRD」 2021 キャンバスに油彩 410×318mm
「SMILEY DOG」 2021 キャンバスに油彩 410×318mm

NODA CONTEMPORARY

TEL 052-249-3155