下家杏樹
「だれにもナイショで展」 
2020.9.25~10.17

下家杏樹が描く作品は、無邪気に遊ぶ子供たちや様々な事物が、まるで軟体動物のように変幻自在にその姿を伸び縮みさせ、柔らかな曲線が軽快に入り乱れています。
どこか懐かしさを感じさせるキャラクターたちはセピア調の色彩と相まって、レトロな雰囲気をまとい、強弱のある描線とフォルムが、より有機的な世界を形作っています。
一見、親しみやすく楽しげな味わいの中には微妙に「毒」や「苦み」もブレンドされて、一筋縄ではいかないこの作家の個性を感じさせます。果たして彼女が描こうとしているのはユートピアなのでしょうか?それともディストピアなのでしょうか?
デジタル化が急速に進むこの社会を背景に、フラットでクールな画面構成が主流となっている今般の現代アートですが、線と色彩と有機的なフォルムに徹底的にこだわり、画面の中のすべてに生命をあたえようとする下家杏樹の柔らかな絵画空間は、まだ誰もが見たことのない、「懐かしいのに新しい」世界観を与えてくれるでしょう。

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さっきの線は面になる。空間と手を繋ぐ。

絵の中はとても自由。何も私を縛ることはできない。

飛ぶこともできるし植物にもなれる。

わたしはいつも自由になりたいと思って生きてきたが、
その「自由」は強迫的なものとなりかえって不自由である。
 
わたしのデフォルメされたイラスト的、又は漫画的なイメージは、
現代社会の簡略化・データ化が主流になりつつある世の中を表現していると同時に、
空気上の電波ではなく油絵特有の古典技法で物質として残すという
まるで水と油のような矛盾を孕んでしまっている。

しかしこの一見不自由で矛盾した画面のなかにも発見、喜び、楽しみがある。

わたしはそれを見つけて大切に、新しく画面のなかに表現できるということが真の自由だと思う。

下家杏樹

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下家杏樹 「だれにもナイショで展」
2020年9月25日
(金)~10月17日(土) 11:00~18:00
会場:NODA CONTEMPORARY

NODA CONTEMPORARY

TEL 052-249-3155