上野英里 個展に寄せて

上野さんは、悩んでいる。
世の中では、絵を描くのは物作りなのに非生産的だと思われている、役にたたないからかな…
一方で、上野さんは動画を見ながら、朝から酒を飲む、吐くまで飲む、
アルコールで澱んだ目には外国の出来事はすべからく、ミュージカルのように芝居じみて嘘臭い、
政治性も社会性も虚しく他人事に映る、なのに彼等の痛みだけは流れこんでくる、辛い。
そして、托鉢のようにアルバイトに出かけてから、絵を描く、辛い辛い、ちっとも楽しくない、
何故絵をかくのか? 「自分を許すためですよ」 え?誰?
たまに神の声が聞こえるそうです(嘘)
上野さんは思った、
待てよ、禅僧修行も非生産的だな…と少し安心するのだった。

吉本 作次
(名古屋芸術大学美術学部絵画科洋画コース教授)

NODA CONTEMPORARY

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